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物性物理学1

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令和元年度以前入学者 物性物理学1
教員名 石田浩
単位数    2 学年    3 開講区分 文理学部
科目群 物理学科
学期 前期 履修区分 選択必修
授業の形態 オンデマンド型の遠隔授業
(パワーポイントスライドおよび音声ファイルの配信)
BlackboardのコースID:20213119(前・水3)
授業概要 物質の性質(物性)をミクロの物理法則から理解する。物性物理学では、物質の巨視的な性質(色、硬さ、電気伝導など)を、物質中のイオンと電子の振舞いにさかのぼって微視的に理解する。ここでイオンや電子の運動を記述するため量子力学が必要となり、また熱平衡状態の多数の粒子を扱うため統計力学が必要となる。前期開講の本講義では、物性物理学の主な対象となる結晶固体について学ぶ。また、格子イオンの微小振動であるフォノンを古典力学、量子力学で記述して、結晶の比熱について考察する。
授業のねらい・到達目標 「物性物理学1」では、原子の電子構造を復習したのち、原子結合について学び、その後、物性物理学の中心となる“結晶固体”について学ぶ。
・孤立原子の電子配置、電子構造を説明できる。1電子の量子数と、多電子の量子数を区別できる。
・イオン結合、共有結合、金属結合のメカニズムを量子力学にもとづいて説明できる、
・結晶の定義を説明できる、格子ベクトルについて説明できる、
・代表的な結晶構造とその特色、違いを説明できる、
・逆格子ベクトルを理解して、計算できる、
・X線回折の原理を理解できる、X線回折から逆格子が決まることを説明できる、
・結晶中のイオンの微小変位による振動であるフォノンについて理解できる、
・音響フォノンと光学フォノンの違いを理解できる、
・ヤング率、ポワソン比など巨視的な結晶の弾性性質について説明できる、
・固体のひずみテンソルと応力テンソルを説明できる。
・物事を科学的根拠に基づいて批判的、論理的に考察し、既存の知識にとらわれることなく、
物事の本質を捉えることができる。既存の知識にとらわれることなく、物事を論理的に・批的
考え、説明することができる(A-3-3)。

この科目は文理学部のDP3及びCP3に対応しています。
授業の方法 Blackboardを通じて、授業15回分のオンデマンド教材を、毎週、配信します。受講生はその教材を使って学修してください。またBlackBoard上で小テストを実施するので、自分で解いて提出してください。課題の解答例は、翌週までに提供するので復習もしてください。またメールを用いて質問に回答します。
履修条件 なし
授業計画
1 授業のイントロダクションとして、物性物理学とは何かを考える。また「物性物理学1」で学ぶ内容について概観する。
【事前学習】2年次の「力学」、「電磁気学」のノートを復習しておく。 (2時間)
【事後学習】パワーポイント教材と授業中のメモをもとに、講義ノートを作成する。 (2時間)
2 原子を構成する原子核と電子についてそ質量、電荷、磁気モーメントなどの基本性質を確認する。古典論の範囲で電子が核の周りを回転するときの軌道磁気モーメントを導き、ボーア磁子μBについて理解する。
【事前学習】高校、1年次の「化学」で学んだ原子中の電子軌道について復習する。 (2時間)
【事後学習】ノートを読み返し理解不⾜を補うとともに、 授業中に出された演習問題をとく 。 (2時間)
3 原子中の多電子問題を扱うための一電子近似について説明する。一電子近似で電子のシュレーディンガー方程式を解くと、主量子数、方位量子数、磁気量子数で電子の軌道が分類できることを学ぶ。
【事前学習】高校、1年次の「化学」で学んだ原子中の電子軌道について復習する。 (2時間)
【事後学習】s, p, d軌道の数学的表式を復習して、Mathematicaなどのソフトウェアで軌道を視覚化する。 (2時間)
4 パウリ排他律とスピン自由度を考慮して、電子軌道をエネルギーの低いほうから順番に占有させることにより、各原子の電子配置が決まることを学ぶ。また電子配置が非閉殻の場合、一電子近似を超えて考えると、電子系のエネルギーは多重項に分裂することを学ぶ。Hundの規則について説明する。
【事前学習】「量子力学入門」で学んだ水素原子のシュレーディンガー方程式の解法を復習する。 (2時間)
【事後学習】周期表の全原子について、電子配置を確認する。また内殻電子と価電子軌道がどこで別れるかを考える。 (2時間)
5 原子間のイオン結合について学ぶ。イオン化エネルギー、電子親和力、クーロン引力のエネルギーからイオン化結合の結合エネルギーは決まることを示す。さらに、正負のイオンが無限の結晶をつくることにより、2原子分子の場合よりクーロン引力のエネルギーが低くなることを学ぶ(マーデリング定数)。
【事前学習】高校、1年次の「化学」で学んだイオン結合について復習する。 (2時間)
【事後学習】ノートを読み返し理解不⾜を補うとともに、 授業中に出された演習問題をとく 。 (2時間)
6 原子間の共有結合と金属結合について学ぶ。水素、窒素、酸素、水、メタン分子など代表的な分子について量子力学の分子軌道に基づいて共有結合の起源を理解する。
【事前学習】高校「化学」で学んだ共有結合について復習する。 (2時間)
【事後学習】N2、CO分子の結合エネルギーがなぜ大きく、O2分子は磁気モーメントを持つのかを考えてレポートにする。 (2時間)
7 結晶の定義を学ぶ。結晶格子、基本格子ベクトル、単位胞(ユニットセル)などの考え方を学ぶ。
【事前学習】高校「化学」で学んだ結晶構造について復習する。 (2時間)
【事後学習】ノートを読み返し理解不⾜を補うとともに、 授業中に出された演習問題をとく 。 (2時間)
8 FCC, HCP, BCCなど基本的な結晶構造および結晶構造の分類の仕方について学ぶ。NaCl、ダイヤモンドがユニットセルに2個の原子をもつFCC格子であることを学ぶ。3個以上の原子をユニットセルに含むいくつかの代表的な結晶につても説明する。
【事前学習】ベクトルの内積、ベクトル積の計算を復習しておく。 (2時間)
【事後学習】周期表上の単体物質の結晶構造を調べて、表にまとめる。格子定数が原子番号の増加とともにどう変化するかを調べる。 (2時間)
9 逆格子ベクトルについて学ぶ。格子空間と逆格子空間が1:1に対応することを説明する。結晶をX線に入射したときの、Braggの反射条件を導く。X線回折の実験からこれから結晶の格子構造が決まることを学ぶ。結晶面の定義とミラー指数について説明する。
【事前学習】「物理学実験」のX線回折の章を復習または予習しておく。 (2時間)
【事後学習】ノートを読み返し理解不⾜を補うとともに、 授業中に出された演習問題をとく 。 (2時間)
10 固体を巨視的な弾性体とみなした時の扱いについて学ぶ。また等方的な物質の、ヤング率、ポワソン比、体積弾性率、せん断弾性率の定義を学ぶ。これら定数間の関係を導く。
【事前学習】「振動と波動」における弾性体中の音波について復習しておく。 (2時間)
【事後学習】単体物質のヤング率、ポワソン比を調べて表にする。 (2時間)
11 固体を巨視的な弾性体とみなした時の扱いについて学ぶ。応力(stress)とひずみ(strain)テンソルについて学ぶ。2テンソルの比例関係を表す弾性定数について学ぶ。立方対称性系では独立な弾性定数は3個であることを学ぶ。
【事前学習】線形代数で学んだスカラー、ベクトル、テンソルについて復習しておく。 (2時間)
【事後学習】ノートを読み返し理解不⾜を補うとともに、 授業中に出された演習問題をとく 。 (2時間)
12 結晶中のイオンの微小振動(格子振動、フォノン)について学ぶ。調和近似のもとで格子振動が独立な調和振動の重な合わせになることを導く。格子振動の波の波長、波数、また独立な波数の範囲を表すブリュアン域について学ぶ。量子力学でこれらの独立な振動を扱うことにより、低温でのイオン結晶の比熱が温度の3乗に比例することを導く。
【事前学習】2年次の「振動と波動」における連成振動について復習する。 (2時間)
【事後学習】2次元、3次元結晶でのブリュアン域について調べる。 (2時間)
13 第12回に続いて結晶中のイオンの微小振動(格子振動、フォノン)について学ぶ。ユニットセルに2個以上原子がいるときはのフォノンが、音波的な音響フォノンと、光学フォノンに分かれることを示す。音響フォノンは光を吸収しないが、光学フォノンは光で励起できる理由を理解する。
【事前学習】2年次の「振動と波動」における連成振動について復習する。 (2時間)
【事後学習】第1~13回までの授業内容をパワーポイント教材と自作のノートでよく復習しておく。 (2時間)
14 これまでの授業を振り返り、期末テストを実施する(A-3-3)
【事前学習】これまでの授業内容について復習しておくこと。 (2時間)
【事後学習】解けなかった問題について、もう⼀度ノート、パワポ教材を参照して解きなおすこと (2時間)
15 まとめ(これまでの復習・解説を⾏い,講義内容の理解を深める)
【事前学習】「物性物理学1」のテキストをまとめたノートを整理して、後期の「物性物理学2」の授業に備える。 (2時間)
【事後学習】事前学習の続きを⾏う。 (2時間)
その他
教科書 使用しない
参考書 使用しない
成績評価の方法及び基準 授業内テスト:小テストおよび期末テストを実施する。(100%)
テストの提出回数が十分でない場合は成績評価の対象としない
オフィスアワー 授業内容に関する質問はメールまたは学科事務室で受け付けます。後者の場合は、時間を調整して、物理学科図書室または本館1階で応対します。対面の実験授業の前後に設定できるよう調整します。

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