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科目名 | 歴史民俗学1 | ||||
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教員名 | 岸本昌良 | ||||
単位数 | 2 | 学年 | 2~4 | 開講区分 | 文理学部 |
科目群 | 史学科 | ||||
学期 | 前期 | 履修区分 | 選択 |
授業概要 | 歴史民俗学とは歴史を民俗学の視点で考える学問です。授業では、民俗学の成立史をたどりながら、基本的性格を明らかにします。また、日本民俗学の成立時に、英国のFolklore(民俗学)の影響があり、英国のFolkloreは考察の範囲となります。その際、英国の民俗(Fairyなど)にも言及します。日本民俗学の成立を確認後、日本が近代社会に入る際に、民俗が歴史とどうかかかわっていたのかを、村(ムラ)と都市(マチ)及び若者の民俗(社会のならわし・しきたり)に関連して考察し、生活における「しきたり・ならわし」の強さを確認します。 |
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授業のねらい・到達目標 | 民俗(「ならわし」)は生活に深く結びついている。民俗学を学び、民俗の視点で歴史を考察することにより、大きな歴史の動きとは関わらないが、日々の生活に関わる歴史があることを認識できるようになる。また、結果として、学生諸君にこれからの社会生活に役立つ知識も提供することも、この授業のねらいの一つである。 この科目は文理学部(学士(文学))のディプロマポリシーDP6及びカリキュラムポリシーCP9に対応しています。 |
授業の方法 | 配布資料を中心に授業が進みます。関連する民俗行事の映像などがあれば使用します。毎回、出席票を兼ねてリアクションペーパーを提出してもらいます。そこでの感想、意見、質問などにより理解度を測ります。史学科の講義であり、多くの資料に接する事が必要なので、配布資料が多くなります。授業中に資料の説明をしますが、授業後、再度、配布資料を良くお読みください。そこで、分からないことがあれば、次回、質問してください。また、資料の性格上、旧字体の漢字があり、読みづらいとの声も聞きます。史学科の授業である以上、辞書引きに努力してください。 また、この授業は2単位で、事前・事後学習は各2時間の学習を目安とします。 |
授業計画 | |
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1 |
[主題]ガイダンス及び民俗とは何か。 [詳細]民俗というと僻地に見られる行事などと考え易いが、近代そのものと思える大工場の中でも、民俗が生きていることを映像で示し、民俗の基本的性格を明らかにする。 [事前学習]シラバスを良く読む事。 [事後学習]風俗と民俗の違い、類似点を整理する事。 |
2 |
[主題]民俗学の成立(イギリス民俗学①)。 [詳細]民俗学は英語「Folklore」の翻訳語であり、Folkloreは英国人W.J.Thomsが19世紀中頃に作った用語であり、それは英国のPopular Antiquites(古代からのならわし)の言い換えでもあった。また、Thomsは英国の伝統あるAntiqurian Society(古物研究家協会)の会員でもあった。 [事前学習]講義には英語が出てきます。翻訳はつけますが、英語に親しんでおいてください。 [事後学習]folkloreとpopular antiquitesの関係を整理すること。 |
3 |
[主題]民俗学会の成立(イギリス民俗学②)。 [詳細]Thoms(トムズ)は英国のFairy(妖精)に関心があり、そこからFolkloreの研究を開始しようとした。ただ、それは、Thomsの属していた伝統あるAntiqurian Society(古物研究家協会)と深く関わっていた。そして、ThomsはFolklore研究の場として雑誌「Notes & Queries」(問いかけ雑誌)を創刊する。それは、Thomsが伝統ある古物研究家協会から別れる第一歩でもあった。 [事前学習]19世紀中頃の英国について調べる事。 [事後学習]Antiqurian Societyの成立事情を整理する。 |
4 |
[主題]イギリス民俗学のまとめ(イギリス民俗学③)。 [詳細]Thomsは晩年になってようやくFolklore研究の同志をつのり、19世紀後半にFolklore Society(民俗学会)を設立し、民俗学研究は格段に進む。 [事前学習]英国人類学者フレーザーに言及するので、どのような人物か調べておく事。 [事後学習]英国での民俗学の成立状況を整理する事。 |
5 |
[主題]日本民俗学会(第一次)の成立 [詳細]明治(19世紀後半)になり、日本では人類学研究が坪井正五郎の提唱で始まり、『人類学雑誌』が創刊される。坪井は英国留学の経験もあり、『人類学雑誌』において、徐々にFolkloreの紹介がされ、坪井の影響力のもと、明治45年に日本民俗学会(第一次)が生まれる。なお、その場に柳田国男の名前はなかった。 [事前学習]坪井正五郎について言及するのでどのような人物か調べておく事。 [事後学習]日本民俗学会が成立するまでの状況を整理する事。 |
6 |
[主題]柳田国男と民俗学。 [詳細]柳田国男は一般的には日本民俗学の父とみなされているが、元来は、詩人であり、経世済民を願う国家官僚であった。ただ、旅行でたまたま立ち寄った椎葉村で、柳田は民俗世界を引き込まれ、英国帰りの南方熊楠からFolkloreの紹介を受け、民俗学研究を志し、雑誌『郷土研究』を創刊する。 [事前学習]柳田国男の著作を読んでおく事。 [事後学習]柳田国男が民俗学に接するまでの状況を整理する事。 |
7 |
[主題]ムラ(村)とは何か。 [詳細]柳田国男が民俗を開眼した椎葉村をビデオを紹介し、ムラ(村落共同体)とは何か考える。民俗学の対象とするムラは、地縁生活共同体であり、社会学における、自然村であり、行政組織としての村(行政村)とは異なることを示す。 [事前学習]村とは何かを考えておく事。 [事後学習]行政村と自然村との違いを整理する事。 |
8 |
[主題]ムラ(村)の変化(地方改良運動)。 [詳細]柳田と南方の交際の元となった神社合祀とはどのような事件であったかを解明し、地方改良運動の一環であったことを指摘し、行政村と自然村の関係を考え、ムラという存在は、歴史社会的な存在であり、でも、その中に民俗が生きている事を示す。 [事前学習]南方熊楠について言及するので調べておく事。 [事後学習]行政村を統一するためには何が必要だったかを整理しておく事。 |
9 |
[主題]ムラ(村)のしきたり(共同・協力・村法)。 [詳細]地方改良運動では、行政村の中の共有地の処分も課題の一つであった。共有地は、ムラ(村落共同体・自然村)にとり必要なものであった。そして、ムラの土地を管理するためには、協同作業が必要であり、決まりが必要となる。法律で定められていない、互いの決まり、シキタリが日本においては中世から存在していた。 [事前学習]村の中の共有地とは何かを考えておく事。 [事後学習]共有・協同作業・村の掟について整理しておく事。 |
10 |
[主題]ムラ(村)のしきたり(ムラハチブ)。 [詳細]ムラのシキタリを守るためには、互いの理解が必要になるが、ぶつかり合うときもあり、ムラの中では暴力をふるうことが出来ず、ムラハチブという形の制裁が生まれ、それは現代的な課題にもなっている。 [事前学習]ムラハチブとは何かを考えておく事。 [事後学習]ムラハチブが何故起きるのかを考える事。 |
11 |
[主題]マチ(都市)のしきたり・仕組み①(町会)。[詳細]都市の基礎社会集団である町会がどのようにして形成されたかを考え、その機能は何かを考察する。 [事前学習]自分が住んでいる所の町会・自治会名を調べる事。 [事後学習]町会がどのような機能を有しているかを整理する事。 |
12 |
[主題]マチ(都市)のしきたり。仕組み②(マンション)。 [詳細]最近、都市において急激に共同住宅に住み、生活をする人々が増えている。マンションの特性、その歴史、法的特性などを考える。 [事前学習]近隣にあるマンションの外観・名称などを調べる。 [事後学習]共有と専用の関係を整理する事。 |
13 |
[主題]マチ(都市)の民俗(火消しと町鳶)。 [詳細]「火事と喧嘩は江戸の華」という言葉が端的に表すように、歴史的な都市の民俗を体現する集団は、かつて火消しを担った鳶職人である。ビデオを使ってかれらの民俗を明らかにすることにより、都市の民俗を考え、年齢階梯的な組織であることを示す。 [事前学習]「鳶」職人とは何かを考える事。 [事後学習]年齢階梯的な組織について調べる事。 |
14 |
[主題]若者のしきたり(若者組)。 [詳細]かつて年齢集団として、自然村の中に若者組があり、村の運営や婚姻の大きな担い手であった。現在でも、各地の民俗行事の担い手でもある。その活動をビデオを使って紹介し、若者組の役割を考え、日本社会の特徴でもある年功序列制について言及する。 [事前学習]前回の講義で論じた鳶の組織について、その特徴を再度、確認すること。 [事後学習]年功序列制の例を探してみる事。 |
15 |
[主題]若者のしきたり(青年団)。 [詳細]若者組は自然村を基礎に成立した社会集団であった。明治・大正になると行政村を基盤に、若者組が合併して、青年団が生まれる。従来の見解だと青年団は官制組織であり、自主的な活動が乏しいみなされ易いが、青年団が、郷土を守るために、様々な活動をし、文化財保護活動の先駆者であったことを示し、官制の組織でも、郷土のための自主的な活動があったことを示し、民俗が新たに生まれることを示す。 [事前学習]青年団とは何かを考えておく事。 [事後学習]文化財保護における、青年団の役割を整理する事。 |
その他 | |
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教科書 | 使用しない |
参考書 | 授業中に指示する |
成績評価の方法及び基準 | レポート(50%)、授業内テスト(15%)、授業参画度(35%) 授業参画度は、毎回のリアクションペーパー等により評価します。 授業内テストとは、授業中にこちらから出す課題への小レポートのことです。その内容により評価します。 |
オフィスアワー | 授業終了後に、質問を受けます。また、授業中に配布する出席票に質問を記入していただければ、次回に回答します。 |